千年姫の幻想界
「待って、猫ちゃん……っと。
どこ……行くの~」
小石に躓きながら、急な坂を登っていく。
暑い……結構、遠くまで来てしまった気がする。
帰れる自信はあるが、式に心配をかけることになりそうだ。
「みゃあぁ」
木々の少し開けた場所で、漸く立ち止まった猫が、前足でポンポン地面を叩いている。
「ここに、何かあるの?」
華もそこにしゃがんでみる。
「……?」
特に何も無い──そう思った一瞬後、そこの地面だけゆらりと揺れた。
「えっ──」
はっとしてよく見てみるが、そこには何も無い地面があるだけ。
でも……気のせい、ではないと思う。
「何なのかしら?」
恐る恐る触れてみても、叩いてみても、何も起こらない。
「おかしいわね……」
そう思っても、やはり変化は見られない。
猫はというと、座り込んで動こうとしない。
結局何があるかは分からずに、にゃーにゃー鳴く猫を抱き上げて、もと来た道を引き返したのだった。