千年姫の幻想界
───
──



その夜……

トキヤの予想した通り、町では騒ぎが起きていた。



「おい、何なんだ?
見たことないぞ、あんな光……」

「山から空に向かって出ているみたいですね。」

「誰かの悪戯か?」

「あんな大規模な悪戯はしないだろう、命取りだ」

「普段あそこには誰も行かないはずよ」

「あっ!光の中に何か見えない!?」

「本当だわ!
でも遠くてあまり見えないわ……」


「何が起こったか分からない。
しばらく山には近づくな」


トキヤを照らした淡い光を見た者達が、何事かと外に出てくる。


得体の知れない、前例の無い出来事は、みるみる町に広がった。

朝を迎える頃には、町の七割に噂が行き届いていた。







──一方華達も、その光を見ていた。


「華様、今宵は満月ですよ」

端を色ガラスで縁取った丸窓を開けた式が、空を見上げる。

「本当。とっても明るいわね。……あら?」


その直後、町の様子がおかしいことに気づいた。

何人かの人々が、空を見上げて指差している。

月ではない、山の方向。


気になって二人で外に出る。


「あれは……」

空に向かって伸びる一筋の光。


「何でしょうね……?」

と言う式の声を聞きながら、しかし答えることなく華は光を凝視していた。

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