こんなお葬式【長篇】
小さな部屋に静かに読経が響き渡ると、おばあさんは少し頭を傾け、手を合わせたまま経に身をまかせていた。

本来、読経が始まってしばらくの間は、司会進行は落ち着くのである。
とはいえ、余裕がある訳ではなく、次にくる親族焼香の事で頭は一杯ではあるが……。

本日の親族焼香はおばあさん一人という事もあり、僕は手空き状態だった。


しかし、何故かおばあさんからは目が離せずにいた。


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