こんなお葬式【長篇】
想い深く
車をゆっくりと進行させ公道へ。
二人の闘病生活が終わったのだ。

ここからが僕達の本当の仕事である。

通常、

─どちらにお送りしましょう?

そんな当たり前の質問から始まり、少し探りを入れる。

喪主が、搬送業者と葬儀社の違いを理解しているのか、理解していないのか。

理解していたとして、初めから葬儀も全て任せるつもりなのか、あくまでも切り離して算段をしているのか。

先方から

─会館なんかは安置させてもらえるんかな?

等の返答であれば、一先ずは仕事確定である。

─自宅へお願いします。

等であれば、ここから分岐に入る訳だ。

─葬儀社は決めてるんや。

等の言葉に繋ると、やっかいなパターンに陥る。

本当の搬送“だけ”業者になってしまうからである。

あまり無理に詰めよりすぎると、

─おたくら搬送業者やろ?

等と、みもふたもなく返されたりするのである。

本当に、ただ単に病院から紹介された搬送業者、搬送業と思っている場合と、
葬儀社事情をある程度わかっていて、わざと、

─送ってもうたら、葬儀も頼まんとあかんのか?

等と嫌味に質問してくる場合もあったりする。


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