イジワル婚約者と花嫁契約
警戒するように私を抱きしめたまま相手から隠そうとする。

「誰ってそれはこっちが聞きたいんですけど」

先ほど同様怒りの籠った声に、確信に代わり一気に緊迫した緊張感に襲われる。

この状態で相手の顔は分からないけれど、声だけでもう相手が誰なのか分かる。

「可愛いとかデートとか聞こえてきたんですけど、おふたりはそういう関係なんですか?」

「そうだが他人のあなたには関係ないことだろ?」

おっ、お兄ちゃんってばなに言ってるのよ!
どっ、どうしよう……絶対に会わせたくなかったのに!

さっきまではあんなに肌寒かったというのに、今は緊張と恐怖から汗が吹き出しそうだ。
頭の中が真っ白状態になるも、健太郎さんの声色からして絶対に勘違いしている。
まずはその誤解から解かなければと思い立ち、慌てて声を上げた。

「健太郎さん、違うんです!」

「健太郎さん?」
「灯里?」

ふたりの声がハモったと同時に、お兄ちゃんの腕の力が弱まり素早く離れた。
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