イジワル婚約者と花嫁契約
彼はもう来ているだろうか?

期待を胸に久し振りに息を上げて走ってきたものの、残念ながら健太郎さんの車は見当たらない。

「まだ来ていない、か」

スマホで時間を確認するとまだ約束の二十分前だった。

それじゃさすがに来ていないよね。

そう理解してもやっぱりガッカリしてしまう。
だってここに来ればすぐに健太郎さんに会えると思っていたから。

がっくり項垂れてしまったものの、その直後車のライトが駐車場中に照らし出された瞬間、心臓が飛び跳ねた。
ライトの眩しさに瞼を閉じるも、すぐにライトは消されエンジンが切られた。
街灯によって照らし出されたのは、見覚えのある車。
そしてその車から降りてきたのは、ずっと会いたかった彼だった。

「健太郎さん……」

ドアが閉まる音と共に漏れてしまった声。
私の姿を視界で捉えると、ゆっくりと歩み寄ってきた。

徐々に鮮明に見えてくる表情。
はっきりと健太郎さんの姿が見える頃には、とびきり甘い目で私を見据えていた。

「灯里早すぎ。……そんなに俺に会いたかった?」
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