イジワル婚約者と花嫁契約
完全に居たたまれない気持ちになり、身を小さくしてしまう。
すると聞こえてきたのは、人をバカにするような乾いた笑い声だった。

「えーあの人が?全然つり合っていないんだけど」

「……確かに。あの人がOKならうちらだっていけるんじゃない?」

クスクスと笑いを堪える声にカッとなる身体。
手にしていた服を掴む手が強まってしまう。

なんで見ず知らずの人にそんなこと言われなくちゃいけないんだろう。
第一言われなくたってそんなの、私が一番よく分かっている。
だから今日だってこんな背伸びした服を着てきたのだから――……。

「あっ、やばい戻ってきた」

「向こうのお店いこ」

その声に顔を上げれば、遠くから駆け足でこちらに向かってくる健太郎さんを視界が捉える。

さっきの物言い……。明らかに私に聞こえるように言っていたってこと、か。
そうでなかったら、健太郎さんが戻ってきた途端逃げるようにどこか行かないよね。
だったら聞こえないフリなんてしなければよかった。
さっさと逃げ出していたら、こんな嫌な気持ちになることなかったのに。
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