イジワル婚約者と花嫁契約
バレないよう目配せすると、さっきから店内にいるお客さんのようだった。
向こうは私に聞かれているとは気付いていないようで、話を続ける。

「うんうん、かっこよかったよね」

「あんな人が彼氏だったらもう最高だよね」

キャッキャッと騒ぎながら話す会話は、もろに私の耳に届いてくるけれど、気付かないフリをして近くにあったトップスを手に取り見る。

ここで店を出るのも、なんか気まずいよね。
それに健太郎さん今電話中だし、戻ってくるまでここにいた方がいいだろうし。
そう判断し、聞こえないフリをしながら洋服を見ていく。
だけどその手も次の声で止まってしまった。

「ねぇ、あそこにいるのさっきの人の彼女かな?」

胸はドキッと鳴り咄嗟に振り返りそうになったものの、グッと堪える。

ダメダメ。ここは気付かないフリ。

「えーそうなの?」

「うん、だってさっきあの人と一緒にいるところ私見たもん」

どんな会話をしようが勝手だけど、もろに本人に聞こえるような言い方はやめてほしい。
でないと居たたまれなくなってしまうじゃない。
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