イジワル婚約者と花嫁契約
ハッとしたように声を潜め聞いてきた千和さんに、つい笑みが零れてしまった。

「いいえ、お兄ちゃんにはバレずに出かけることができました」

「そうなの?……じゃあなにかあった?」

心配そうに見つめる瞳に心が温かくなる。
今までこんな風に家族以外で、私のことを心配してくれる存在はいただろうか?
友達はいても親友と呼べる子なんてひとりもいなかった。
千和さんが初めてだ。

「実は……」

そんな千和さん相手だからこそ、つい社食ということも忘れて全て打ち明けてしまった。



「なるほど、ね。そんなことがあったんだ」

「……はい」

ゆっくりとお互い食事する手を休めた。

「なんか分かるな、灯里ちゃんの気持ち」

「私の気持ち、ですか?」

「うん」

そう言うと千和さんはまた食べ進めながら、ゆっくりと話し始めた。

「好きな人のことになると、誰だって不安になって当たり前。……どうしようもないことに対しても嫉妬したりしちゃうもの。それに泣きたくなる気持ち、すごく分かる」

「千和さん……」
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