イジワル婚約者と花嫁契約
言葉に詰まっていると、なぜか千和さんは空いている私の隣の席に腰掛け、そして周囲を気にしながら小声で私にしか聞こえないように囁いてきた。

「あのね灯里ちゃん……実はこの前、代表と食事した時に聞いちゃったの。……ふたりに血の繋がりがないってこと」

嘘、ちょっと待って。
千和さん、今なんて言った?

驚きすぎて瞬きさえ忘れてしまった。

だってまさか……。

「代表がね、私になら話しても大丈夫だろうって言ってくれて。……それで全部聞いちゃった」

「そう、だったんですか」

うまく口が回らない。
だってそれって私がずっと千和さんに嘘をついていたことが、バレてしまったってことを意味するのだから。
どう思ったかな?ずっと一緒に働いていて、千和さんの気持ちを知っていたのに、こんな肝心なことを言わず内緒にしていたのだから、怒っている?幻滅した?

そんな不安が一気に襲ってきたけれど、千和さんがなぜか穏やかに微笑んでいる。

「正直、最初聞いた時は焦った。……だって血の繋がりがないってことはふたりは結婚できちゃうってことでしょ?いつもの溺愛っぷりを見ていたから、間違いなく代表は灯里ちゃんのこと、ひとりの女性として好意を抱いているって瞬時に思っちゃったの」

「千和さん、それはっ……!」
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