イジワル婚約者と花嫁契約
漏れてしまった本音。
すると彼は考える間もなく答えた。

「隠さないだろ。……好きになってもらうなら素の自分を好きになってもらいてぇし。偽りの自分を好きになってもらっても、嬉しいと思えない」

「……っ!」

清々しいほどの言いぐさ。
だけどなぜか私の胸には彼の言葉が大きな音を立てて、侵入してきてしまった。

“偽りの自分を好きになってもらっても、嬉しくない”

怒られている気分だった。
私のことを言われているような気がしてしまった。

一瞬にしてフラッシュバックする幼い頃の記憶――。
私は今まで出会った何人の人に、偽りの自分で接していただろうか……?

「だから俺は君の前では、もう自分を偽ったりしないから」

彼の声にハッと我に返る。
そしてそのまま視線を上げれば、真剣な瞳で私を見つめる彼と目が合ってしまう。

どうして私なのだろうか。
本当に困る。
こんな人、絶対無理。……なのにどこかで彼の言葉が“嬉しい”と思えてしまっている自分がいる。
そんな自分が邪魔をしているんだ。
なにか言い返したい私を――。
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