イジワル婚約者と花嫁契約
だってここでなにか言い返さないと、肯定しているととられてしまいそう。
そうだよ、ここでなにも言わないのはマズイ。
そう思い、「あのっ……」と言葉を発した時だった。

「あっ、こんなところにいたのね。楽しい時間を過ごせたかしら?」

そう言ってやってきたのは、仲人の人だった。

「はい、灯里さんととても楽しい時間を過ごさせていただきました」

さっきまでとはまるで別人。
食事中の時のような爽やかな笑顔で答える彼に、開いた口が塞がらない。

なんて切り返しの早い人だろうか。

豹変ぶりを目の当たりにして、彼の二重人格説がますます真実性が増した。

「それは良かったわ。おふたりの式に呼ばれること、今から楽しみにしているわね」

「ありがとうございます。その時は是非お願いします」

なっ……!式!?式って結婚式ってことよね!?

あまりに飛躍過ぎている話に言葉が出ない。
そんな私の様子に気付いた彼は、先に歩き出した仲人さんに気付かれないよう、妖しい笑みを浮かべながら囁いた。

「また今度な」

そのまま自然と繋がれた手。
そして仲人さんの後を追うように歩き出した。
< 19 / 325 >

この作品をシェア

pagetop