イジワル婚約者と花嫁契約
『知ってる』

「――え?」

予想に反した答えに足は止まってしまう。

『一か八か来て正解』

「嘘……」

スマホを耳に当てていた手は、ゆっくりと下がっていく。
だって視線の先には健太郎さんが立っていたのだから。

そして私に向かって笑顔で手招きしている。『おいで』と口を動かして。
その姿を見た瞬間、止まっていた足が動き出す。
真っ直ぐ健太郎さんの姿を捉えたまま――。

エントランスを抜け外に出ると、目の前には健太郎さんがいて、驚きで心臓がバクバク言っている。
そんな私に健太郎さんは得意気に言い出した。

「なんとなくまだ会社かなって思ったんだ。……昨日ぶりだな、灯里」

「健太郎さん……」

あぁ、もうダメだな。
どうして私はこの人がこんなに好きになってしまったのだろうか。
こうやって会いに来てくれただけで嬉しくて、泣けてくる。

溢れそうになる涙をグッと堪える。

「今日は仕事、早く終わったんですか?」

呼び出されたとはいえ、二日連続で早く上がれるなんてきっと健太郎さんにしてみたら珍しいことだ。

「あぁ。つーか早く終わらせてきた。……だって灯里、昨日様子が少し変だったし」

「え?」
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