イジワル婚約者と花嫁契約
健太郎さんの体温とかぬくもりとか、匂いとか逞しい胸板とか腕の力とか……。
五感全てで感じられて、心臓は壊れてしまうんじゃないかってくらい速く脈打っている。

だけど例え心臓が壊れてもいいとさえ思えてしまう。
今はただ健太郎さんのぬくもり全てを感じていたいって思えてしまうよ――。

ドキドキとうるさい心臓。それでもどうしたらいいか分からず状態だった腕はゆっくりと健太郎さんの背中を目指す。
もっと健太郎さんのぬくもりを感じたい一心で。

そっと健太郎さんの背中に腕を回すと、一瞬身体が驚いたように動いたものの、「灯里」と声が漏れるとまるで誉めるように髪をそっと撫でてくれた。

ますます近くに感じる健太郎さんに、緊張や恥ずかしさよりも嬉しさが込み上げてくる。

ここが会社の前とか歩道には人が沢山いるとか。そんなことまるで気にならないくらい今はただ健太郎さんのぬくもりを感じていたかった。

どれくらいの時間、健太郎さんと抱き合っていただろうか。
何度も髪を撫でていた手は離れていき、ゆっくりと身体は離されていった。
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