イジワル婚約者と花嫁契約
「痛むか?」

「……ちょっと」

絞り出すような声で答えると、健太郎さんの表情は歪む。
初めて見る今にも泣き出してしまいそうな顔に、目が点になってしまった。

だって本当、健太郎さんのこんな顔なんて初めて見たから……。

「……緊急で運ばれてくる患者の情報聞いた時、耳を疑ったよ。まさか灯里がここに運ばれてくるとは、夢にも思わなかったから」

健太郎さん……。

今の姿に心配してくれたんだってことが、ヒシヒシと伝わってくる。

「でも良かった。ちょうど今日は宿直で。俺が執刀することができたし。……でなかったら他の男に灯里の身体を傷つけられるところだった」

相変わらず痛くて苦しいというのに、健太郎さんの冗談めいた話に自然と口元も緩んだ。

「痛みが酷そうだし、鎮痛剤を打とう。それとまだ熱が高いから後頭部に氷枕を入れてもらうよう言っておく。……今はとにかくゆっくり休め」

そう言って頭に触れたのは、大きな手。
ゆっくりと頷くと健太郎さんは安心したように微笑み、静かに病室を出て行った。
< 212 / 325 >

この作品をシェア

pagetop