イジワル婚約者と花嫁契約
信じられない話に、ただ驚くばかりだ。
だけど、そっか。……健太郎さんが働いている病院に搬送されちゃったんだ。

「そうだ、和臣にも灯里が目を覚ましたこと知らせなくちゃ。あの子ったら泣く泣く仕事に戻ったのよ。……全く、困ったお兄ちゃんよね」

そんなことを言っているくせに、お母さんはどこか嬉しそうだ。
いそいそと電話をするべく病室を出て行った。

「父さんもちょっと席を外すな」

その言葉に頷くとお父さんは口角を上げ、静かに病室を出ていった。

それにしても盲腸とは……。
しかも健太郎さんにオペしてもらったなんて、なんかすごい。
お兄ちゃんが健太郎さんが働く病院を知る由もなかったはずだし、本当に偶然だったんだよね。

「灯里……?」

お父さんが出て少ししてから数回ドアをノックする音と共に、開かれたドア。
そして聞こえてきたのは大好きな人の声――。

ゆっくりと顔だけドアの方を向けると、そこには白衣を身に纏った健太郎さんが立っていた。

「大丈夫か?」

私が目を覚ましていることを確認すると、すぐにベッドまで駆け寄ってきてくれて、目線を合わせるようにしゃがみ込んだ。
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