イジワル婚約者と花嫁契約
貰えた時は嬉しくて、だけどお兄ちゃんの手前指にはめることができなくて、机の中に大切に保管しているけれど……。
今さら再認識させられる。
あの指輪は健太郎さんひとりで選んでくれたものじゃない。……目の前にいる梅沢さんと一緒に選んでくれたものなんだって。
そう思うと酷く胸が痛んで仕方なかった。

「良かったです、喜んでいただけて。では失礼します。なにかあったらナースコール押してください」

「……はい」

力ない返事をすると梅沢さんは病室を出ていった。

「……やだな」
シンと静まり返った病室に響く声。
ポツリと漏れてしまった本音だった。

私の担当ってことは、退院するまで梅沢さんにお世話してもらうってことなんだよね。
再確認するまでもなく当たり前なことなのに、それが堪らなく嫌だ。
こんなわがまま、子供染みていると分かっているけど、そう思わずにはいられなかった。

昨日は健太郎さんが働く病院に搬送されて良かったと思っていたけれど、今は違う病院が良かったと現金なことを考えてしまっているのだから。
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