イジワル婚約者と花嫁契約
だけど健太郎さんは違うと言う。

「昔に戻ったみたいだ」

「え?昔?」

意味が分からず聞き返すと、健太郎さんはなぜかしまったと言いたそうに口元を手で押さえる。

「いや、その……ほら、例えるなら子供みたいな笑顔だってことだ」

「はぁ……」

腑に落ちない部分はあるものの、頷くと健太郎さんは急に乱暴に私の頭を撫でた。

「とにかく早く元気になれ!……でないとなにもできないだろ?」

頭を撫でた手はゆっくりと下に落ちていき、唇を撫でる。
そしてそのまま縮まる距離に、心臓が暴れ出す。

最初はここは病室!健太郎さんは勤務中!そう思っていたくせに、距離が近づいてくるたびに、そんなことどうでもよく思えてきてしまう。

“キス、してほしい”

そう願ってしまっている。

唇を撫でていた手は、優しく私の頬を包み込む。

「灯里……」

切なげに名前を呼ばれた瞬間、急に勢いよく病室のドアが開かれた。

「灯里ー!遅くなって悪い!大丈夫か!?」

「……っ!?」

お兄ちゃんの声が響き渡る中、私と健太郎さんはというと、驚きすぎて固まったまま。
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