イジワル婚約者と花嫁契約
彼と目を合わせていたけれど、ゆっくりとふたりで視線をドアの方へと向けると、そこには私達とおなじように固まり立ち尽くすお兄ちゃんの姿があった。

どっ、どうしよう……これ。
確実にまずいよね?

誰がどう見たってキスしようとしていたとしか見えないはず。
言い訳の言葉も見つからない中、健太郎さんはゆっくりと立ち上がった。

「ご無沙汰しております、お兄さん」

いつもと違う声色で挨拶をすると、お兄ちゃんの顔はみるみるうちに変化していく。

「ご無沙汰しております、じゃねぇだろ!それよりお前に「お兄さん」と呼ばれる筋合いはない!!」

思わず目を瞑ってしまうほどの声のボリュームに、慌てて声を上げた。

「おっ、お兄ちゃん!ここ病院だから!」

慌てて落ち着かせようとしたけれど、お兄ちゃんの怒りのボルテージはますます上がる一方だ。

「灯里は昨日手術をしたばかりなんだぞ!?なのに貴様ときたら、今なにをしようとしていたっ!それが病人に対して医者がすることか!」
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