イジワル婚約者と花嫁契約
「そんな顔するなよ。……妹なら察知してくれ。俺が今どんな思いで灯里を送り出しているのかを」

「――え?」

するとなぜか急に助手席のウインドウが開き、田中さんが顔を覗かせた。

「灯里さん、代表は寂しいんですよ。可愛くて大切な灯里さんを他の男に差し出すのですから」

「あっこら田中!なに言っているんだ!!」

「なにって代表に代わり、真実を灯里さんに告げたまでです」

こんな時でもブレない田中さんに、口元が緩んでしまう。

でもそっか。……お兄ちゃんってば――……。

いまだに田中さんに文句を言うお兄ちゃん。
そんなお兄ちゃんにどうしても伝えたくて、二、三歩近づいた。

「お兄ちゃん」

呼びかけにすぐに文句を言うのをやめ、照れ臭そうに目を泳がせながら「どうした?」と聞いてきた。

「私にとってお兄ちゃんはいつまでも、何歳になっても大好きなお兄ちゃんに代わりないよ?」

「――え?」

出会った時からずっと私のことを可愛がってくれて、いつもそばにいてくれた。
たまに沢山の愛情をくれちゃうときがあるけど。
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