イジワル婚約者と花嫁契約
「あと指輪はわがままだけど、ちゃんと健太郎さんが一人で選んでくれたものが欲しかった」

「そうだよな、うん。自分ひとりで悩んで選ぶ。それでちゃんともう一度灯里に渡すよ。他に俺に言いたいことある?わがままじゃないし、全然言ってほしい」

言いたいこと。
一番言いたいことがある。

「……私以外の人とはもう絶対そんなことしないで下さい」

だって嫌だから。
好きな人が他の人とそういうことをするとか。

言ったはいいものの、照れ臭くなってしまい健太郎さんの胸に顔を埋めた。
すると頭上からはクスクスと笑う声が降ってくる。

「つい数カ月前、親が招待されたパーティで灯里を見つけた時、一瞬で灯里だって気付いたよ」

「え……パーティ?」

「そ。灯里も出席していただろ?二月頃に開催された灯里の親父さん主催のやつ」

二月頃……。そういえば行った気がする。
行く気はなかったけれど、お兄ちゃんは仕事で行けなくてお母さんは風邪を引いてしまっていたから、仕方なく家族として出席したんだ。
だけど全然気付かなかった。あのパーティに健太郎さんも出席していたなんて。

「インフルエンザが猛威を振るっていた時期で、親父は出席できなくて。最初は渋々だったけど、親父の代わりに出席してよかったよ。そこで灯里と再会できたのだから」

「……声、掛けてくれたらよかったのに」

ポツリと本音が漏れてしまった。
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