イジワル婚約者と花嫁契約
数年前までは俺の後を追っていた灯里が、俺の元から去っていくようだった。

「もう!どうしていつまで経ってもそうなんですか!?」

「痛っ!」

灯里の背中を見送っていると、急に千和から背中を思いっきり叩かれてしまった。
そして呆れたように大きく息を吐く。

「灯里ちゃんから連絡を貰った時は、耳を疑ってしまいましたよ。……佐々木さんのこと“あいつなら灯里を任せられる”って言っていたじゃないですか」

「それはそうだが……いざ灯里が本当に嫁に行くのかと思うと、いてもたってもいられなくて……!」

必死に涙を堪えながら言うと、千和はますます呆れたように息を吐いた。

「灯里ちゃんにとってこれからも、自慢の兄でいるんだって宣言していたのは誰ですか?」

「む……俺だ」

「だったらしっかり有言実行してください」

容赦なくピシャリと言い放つ千和に、肩が肩がすくんでしまう。

千和は俺の会社の従業員で、灯里の先輩でもある。
仕事に一生懸命で明るくて、サバサバしていて。
周囲からの信頼も厚い姉御肌だ。
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