イジワル婚約者と花嫁契約
嫌われたかもしれない。
それを覚悟した時、灯里からは信じられない言葉が飛び出した。

「お兄ちゃんも遅れないでちゃんと来てね」

「――え?」

てっきり怒られると思っていたものだから、目を丸くさせたまま灯里を凝視してしまう。
そんな俺を見て灯里は可笑しそうにクスクスと笑い出した。

「なに?お兄ちゃんってば私に怒られるとでも思っていたの?」

「え!いや、その、まぁ……」

言葉を濁してしまう。

でも普通はそう思うだろう?

「悪いけど、こんなことされたって怒らないよ?……だっていつものお兄ちゃんがすることだし。……私の大好きなお兄ちゃんがよくしちゃうことだもの」

「灯里……」

年甲斐もなく泣きそうになる。
結婚式当日にこんなことをした俺のことを、『大好きなお兄ちゃん』と言ってくれるなんて……!

「結婚式、絶対に来てね」

そう言われてしまったらもう頷くしかない。
涙が溢れそうで何度も何度も頷くと、灯里は安心したように微笑み爽快に階段を下りていく。
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