イジワル婚約者と花嫁契約
「どうぞご勝手に」

ツンとした声で言うと、佐々木さんは表情を顰めた。

「可愛くねぇな」

「可愛くなくてけっこうです」

別に佐々木さんに可愛いだなんて、全然思われたくないし。
スマホを差し出したままの私と、それを受け取らない佐々木さん。しばし睨み合っているとリビングの方から声が聞こえてきた。

「……あら?誰かと思ったら、佐々木さんじゃないですか!」

やっと車の鍵が見つかったらしく、リビングから佐々木さんを見るなり嬉しそうに駆け寄ってきたお母さん。

「ご無沙汰しております。先日はお時間作って頂き、ありがとうございました」

するとすぐにスイッチが入ったように、偽物の笑顔を張り付ける彼に呆気にとられてしまう。

お見合いの日も思ったけど、この人本当に二重人格者だと思う。

「もしかして灯里に会いにきてくれたのかしら?灯里ったら、最近ずっとスマホを見ては溜息ばかり漏らしていたのよ」

ほんのり頬を染めて囁くお母さんに、ギョッとしてしまう。

「ちょっ、ちょっとお母さん!?」
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