イジワル婚約者と花嫁契約
いまだに痛む額を押さえながら睨みつけてると、なぜか佐々木さんは照れたように頬を掻いた。

「ダメ元で送ったメールに“連絡待ってます”なんて返してくるから、驚いたじゃないか」

「え……だって、それは……」

そもそも佐々木さんの方から誘ってきたんじゃない。
余計な殺し文句も添えて。
それなのにスマホを落としてしまうほど動揺したっていうの?

「正直あれ、グッときた」

「なっ……!」

口元を押さえ囁く彼に、こっちまで伝染してしまった。

金魚のように口をパクパクさせるだけで、言葉が出てこない。
だってあり得ないじゃない。

あのたった一言の返信メールに、頬を赤らめながら“グッときた”なんて。

「っとにかくこうやってわざわざ聞きにきたんだから、さっさと番号とアドレス教えろ」

最悪だ。どうして私、こんな人の言動に戸惑ったりしちゃったんだろう。
なによ、教えろだなんて上から目線。

熱かった頬は急激に冷めていく。
返事をすることなく無言で手にしていた鞄の中からスマホを取り出し、差し出した。
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