イジワル婚約者と花嫁契約
慌てて止めに入るも、時すでに遅し……。
チラッと佐々木さんを見れば、ばっちり目が合ってしまった。
そして予想通りニヤニヤと笑っている。

「そうですか。ちょうどスマホが故障してしまい、灯里さんと連絡が取れない状況だったんですよ」

「やっぱり!灯里の溜息の原因は佐々木さんだったのね」

自分の予想が当たり嬉しいのか、満面の笑みを浮かべるお母さん。

「やっと買い替えることができ、番号とアドレスを聞くついでに灯里さんに一目でも会いたい……。すみません、なんの連絡もせず伺ってしまって」

「いいのよ、佐々木さんなら。それに灯里も喜んでいるでしょうし。ね?灯里」

いやいや、ね?って言われても困るよお母さん!
微妙に半笑いになってしまう。だけどそんな私に構うことなくお母さんは話を続けた。

「だけどごめんなさいね、これから家族で食事に出かけるところだったのよ。あっ!よかったら佐々木さんもご一緒にいかが?きっと主人も喜ぶわ」

またギョッとしてしまった。
お母さんってばなにも考えてなさすぎる!お兄ちゃんも一緒に食事することを忘れているのだろうか。
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