イジワル婚約者と花嫁契約
「灯里ちゃん、今日は特に来客の予定ないし行ってあげて」

救いの一言に、開発部の人の表情がパッと明るくなる。
千和さんに言われてしまってはもう本当、NOとは言えないや。

「分かりました」

小さく息を漏らし返事をすると、「ありがとう!」と大きな声でお礼を言ってきた。

「そうと決まれば早速お願い!部長がもうずっと責め立てられていて大変なんだ」

「はい」

千和さんに「いってらっしゃい」と見送られ、急いでオフィスの中へ足を踏み入れる。
受付業務上、一日のほとんどの時間をエントランス前にあるカウンターで過ごしているけれど、出勤前や出勤後、会議や休憩中はオフィスに入る。
いつもは終始和やかな雰囲気だけど、今はその面影などなくいつになく全体がピリピリしている。
その原因は絶対お兄ちゃんだ。

「こっちこっち!代表の部屋だから」

再度“お願いポーズ”され、開発部の人は自分の仕事に戻っていった。

さて、まずは飲み物を用意してと。

給湯室に入り、お兄ちゃんが好きなブラックコーヒーを淹れ、いざ向かう。
その途中ずっとみんなから無言のメッセージが背中に届いていて痛い。
“お願い早くどうにかして”ってメッセージが。
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