イジワル婚約者と花嫁契約
普通企業のトップの身内が入社してきたとなったら、大抵煙たがられるところだけど、私の場合この役目があるから今までそんな扱いを受けたことがない。
仕事はまだまだだけど、この時ばかりはみんなの役に立てている感を感じられるんだよね。

今も部屋の中からはお兄ちゃんの怒鳴り声が聞こえてくる。
どうしてお兄ちゃんが怒っているのか分からないけれど、一度クールダウンが必要だ。

ドアを数回ノックすると「なんの用だ!?」といつになく荒々しい声が返ってきた。

最初は怯んでしまったけれど、今ではもう慣れっこだ。

「代表、失礼します。珈琲をお持ちしました」

するとさっきまでの荒々しい声から一変、いつものお兄ちゃんの甘い声が返ってきた。

「その声……灯里か!?」

ドタドタと聞こえてくる足音。そしてすぐに勢いよくドアが開かれた。
< 52 / 325 >

この作品をシェア

pagetop