イジワル婚約者と花嫁契約
なにも言わない私に痺れを切らしたように発せられた声に、ハッと我に返る。

「聞いています!それとメールでも言いましたけど、絶対に呼びませんからね」

メール同様、きっぱりと伝えた。

『なんで?俺達、お見合いしたし結婚して夫婦になる仲だろ?だったら名前で呼び合うなんて当たり前のことじゃないか』

なっ、なにを言っているの!?

「なに言っているんですか!?確かにお見合いはしましたけど、私は佐々木さんと結婚するつもりありません!」

『は?いまさらなに言ってるんだよ』

明らかに彼の声色が変わった。
怒りを含んでいる声に一瞬怯みそうになりつつも、ここで負けたらダメだと自分に言い聞かせる。

「あの、一度ちゃんと聞きたかったんですけど、どうして佐々木さんは私なんかとお見合いしたんですか?佐々木さんならもっとつり合う相手が、周りに沢山いますよね?」

医者として働く彼の周囲には、沢山の出会いがあるはず。

最もなことを言ったというのに、電話越しの彼は大きな溜息を漏らした。

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