イジワル婚約者と花嫁契約
強い口調で言われているというのに、佐々木さんの言葉がすんなりと入ってくる。
だって佐々木さんの言う通りだと思うから。
“なんか”っていう言葉は、自分の価値を下げているのかもしれない。
そう思うと、少しだけ佐々木さんに対する見方が変わっていく。

彼が医者で二重人格で、突拍子もない人ってことくらいしか分からないけれど、さっきの一言で少しだけ佐々木さんがどんな人なのかを、知れた気がする。

『それと!いい加減佐々木さんはやめろ。近い将来灯里も佐々木さんになるんだぞ?』

せっかく見直していたというのに、また完全に私の意見を無視した発言にガクッと肩を落としてしまった。

あぁ、ちょっとだけ気持ちが揺れてしまったことが恥ずかしい。

「もうひとつだけ聞かせて下さい。……どうして私と結婚したいんですか?」

「結婚したい」イコール「好き」って意味ではないんでしょ?
だって佐々木さんが私を好きになるとか、やっぱりあり得ないって思うから。
じゃあそんな私と結婚したいというメリットはなんなの?

変な緊張感に襲われながら彼の返答を待つ。


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