Secret Mission
教室に帰る途中、悠斗はあっと声を上げた。
「そうだ。水樹、メアドくれ。」
「携帯直ってからな。…ああ、思い出したらイライラしてきた…。」
まだ壊されてから一日も経ってないのだ。
苛立ちも感じるものだろう。悠斗は水樹の性格からして、詮索しないほうが良いだろう。そう考え、宥めようと声をかけた。
「気にすんなよ。携帯ぐらいお前の親父さんに頼めばすぐだろ。」
「あんまり頼みたくないんだけどな…。それにアレ気に入ってたし。」
水樹は昔から自分の力でやって来ていたからか、人に頼むのに慣れていない。
だからこそ、高校に行かずに自営業をやり始めたのだが、それでも無理なことというのはこの世の中には存在するのだ。
「ま、今回は仕方ないだろ?」
「…そうだな。」
その後、二人は別々のクラスのため別れ、水樹は深呼吸をしてから教室へと入った。
直後に感じたのは視線の数々。
なんで転入したばかりなのにあんなに中の良い人が居るのか。とか、様々な視線だ。
だが、水樹はそれに気付いていた為、そこまで気にしなかった。
席に座ると近づいてきたのは燈蔭と翔だ。
「水樹ぃー!あれ誰?なんか親しげに話してたけど!」
「それは俺も気になるかなー。」
そして、それを止めるのは和人。よくある光景である。
「い、いえ…ただの幼なじみ、みたいなもの…です。」
「そうなの?」
「…だから言っただろう。そう問いただす程のことではないと。」
燈蔭は何となくつまらないという顔付きだ。
もう少し壮大なものだと思っていたのだろう。