Secret Mission




それから、すぐに放課後となり、水樹は家に帰ってきた。

別に代わり映えの無いはずの家なのだが、そこには異物がひとつ。


水樹のではない革靴がそこにはあった。


その靴は水樹…いや、瑞稀にとって、よく知る人物のもので、顔を歪める。

靴の持ち主は扉が開いた音を聞いたのだろう。
ドタドタと音を立てながら玄関にやってきた。


「瑞稀!おっかえりぃ!」

「うるせぇぞ親父。つぅか、何でここにいんだ。不法侵入で訴えるぞ。」


そう、瑞稀によく似た見た目の男性…つまり、瑞稀の父親

鈴谷綾人だ。


熊野と同じ会社に勤めている綾人にとって、家の鍵を貰えることは容易いことなのだが、それでも瑞稀にとって、綾人がここに居るというのはとても嫌なわけだ。


まず、瑞稀が綾人にお金を借りたりしないのもこういう理由だったりする。
一万頂戴と、言ったら五万はくれるだろうほどの親ばかっぷりに嫌気が差しているのだ。


「瑞稀が電話に一切出てくれないからだ。」

「しょうがねぇだろ。携帯壊れてんだから。」


予備としてもう一つあるのだが、それは仕事用だ。
そこまで使いたくない。


「携帯…熊野が誕生日プレゼントに買ってくれたやつか?」


そう聞いてくる綾人に瑞稀はコクンと頷く。
リビングからは美味しそうな匂いが漂ってきており、綾人あたりがご飯を作ったのだということが想像できる。

瑞稀には綾人という父親がいる。なのに、なぜ、熊野が第二の親なのかというと、簡単である。

綾人は会社で言うお偉いさんの立場にいるため、出張や残業が多くあった。


母親は瑞稀の小さい頃に亡くなったため、そばにいてくれる人というと熊野しかいなかったのだ。

それも、綾人が頼んだことだが…。


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