Secret Mission
「どこ行くのー?」
「馬鹿な親とは思いたくもない親をぶん殴ってくる。」
ぶん殴る
その言葉に驚いている翔たちを置いて、水樹は観客席の方へと向かった。
「ぶん殴るって……」
「気にしなくていいと思うよ。水樹の父親も強いし。」
「ふぅん…あ、それよりさ。和人と辰巳の応援しなくていいの?」
「あ、忘れてた。」
今は1000m走。普通なら100からじゃないかと思うが、ここでは1000から始まる。
体力を使うのが1000だからだろう。
水樹は声の方向へ大股で歩く。
いつもなら大股ではないがそれほど苛ついているという訳だろう。
綾人もイケメンの部類に入るが、それが全て親バカさで崩れているのか、保護者の人は格好良さに頬を赤くする反面、煩さに顔を顰めていた。
水樹は綾人の後ろに立つと、頭目掛けて蹴りを入れた。
「おい、クソ親父。」
……と言っても、受け止められていたが。
「なんだい、水樹。人が応援しているのにこっちに来てしまったのか?
嬉しいが…棄権なんてしなくとも……」
熊野さんも居たようだが、今は煙草でも吸いに行っているのかここには居なかった。
「テメェは俺がすべての競技に出てるとでも思ったのか?」
「ん?出ていないのか?」
「出れるわけねぇだろ……馬鹿か?」
「水樹ならすべての競技に出ても問題ないと思ったが?」
ため息が出るほどの親ばかっぷりである。
頭もそれなりに良いはずなのだが当然のことが考えられてないようだ。
先に言っておこう、この運動会。掛け持ちなのは一切無効だ。
一人ですべての競技に出るなど以ての外である。
「問題ない、とかの問題じゃねぇよ…。一回冷静になれ。」
水樹は手に持っていた水を綾人に掛けながら言う。
周りの人が声を上げているが無視だ。
「っ!?冷た!?寒い!ななな、何するんだ!」
「頭冷やしたら頭が働くかと。」
「物理でやるものじゃあないぞ!?それは!」
ぶるぶると寒さに震えながら綾人はタオルで体を拭いてから毛布に包まる。