婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~
パーティーの間中、なつは圭司のことばかり考えていた。
彼の表情があまりにも切なげだったからだ。
なぜあんな目で自分を見たのだろう。
いくら考えてもなつには答えは分からなかった。
「それじゃあ、なつ。私は後援会の人たちと二次会に行くから、おまえは田島に送ってもらいなさい」
賢三は機嫌よく笑いながら、第二秘書と共にハイヤーに乗って去って行った。
「さっきの男は、なつさんが昔つき合っていた男でしたよね」
田島はなつを自宅に送り届けると、門の前で唐突に口にした。
「偶然あそこで見かけたんです」
「そうですか。でも、もうあの男には不用意に近づかないで下さいね。あなたは僕の婚約者なんですから」
「…………わかっています」
なつは田島から目を逸らす。
暗がりで表情までは見えないが、なつには田島の苛立ちが伝わっていた。
「いえ、あなたは全然分かってない!」
田島はそう言って、なつの唇をキスで強引に塞いだ。
「んっ!! イヤッ!」
突然のことに驚くなつ。
田島はなつの両手を座席のシートに押さえつけながら、どんどんキスを深めていく。
「や……やめて………お願い」
とうとうなつの目から大粒の涙が溢れだした。
田島はハッとしてキスを止めた。
「すみません」
小さく呟いた田島。
なつは震える手でシートベルトを外して、車から飛び出して行った。
気持ち悪い。
圭司のキスと全然違う。
まだ感触の残る唇をなつは水で洗い流した。
なつは絶望した。
愛してもいない相手に体を差し出さなければならない自分の運命に。
せめて初めてだけは愛する相手に捧げたい。
たとえ相手が自分を愛していなくても。
なつは流れ落ちる水の音を聞きながら、そんなことを考えていた。