優しい黒魔女
「あまり怒らないであげてくださいね、主」

「ええ、分かっているわ。でもローダンセ、こんな事が二度と起きないようにするのは、これが一番良い方法なのよ」

「…そうですね」



ローダンセと呼ばれるのは10歳前後の少年の姿をした水の高位精霊である。

困った顔をして笑う彼は愛らしい。



「ところであの人間ですが、相当な実力者のようですけど一体何者なのでしょうか?」

「服から推測して身分が高い事は明らかでしょうね。目を覚まさない内に街に置いて行きたいのは山々なのだけど…」



そこまで言ってマイコは寝室のドアに目線を移した。

服はケルベロスによってボロボロに裂かれて原型を留めていなかったが、手にすれば質が良い事はすぐさま分かった。

どうやら厄介な展開になりつつあるようだ。
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