形なき愛を血と称して。【狂愛エンド】

「人間なら、誰の血でもいい訳じゃない。狂った奴が狂った奇跡を生み出した。魔術だなんて馬鹿げたことをやってしまう、人間よりも一歩先を歩むカウヘンヘルム家の血でなければ、この気体は小瓶の中に留まることも出来ない。先祖代々受け継がれるこのレシピを、公表しないのも当たり前だ。グランシエル家の吸血鬼に知られようものならば、今度はこちらが家畜になる」


もっとも、そう怯えていたのは先代までの話。惜しげもなく全てを話すリヒルトは、あくまでも穏やかだった。

「愚かだよ、カウヘンヘルムは。金儲けのためとやってきたはずが衰退し、後戻り出来ない高みに到達し、罰を受けたくないと、罪を重ねることで平行線を保ってきた。高みに登ったなら、後は落ちるだけなのに。愚かな奴らは、禁忌に禁忌を重ねた」

悪魔と契約し、裏切り。
吸血鬼と契約し、破滅させ。
さらにはーー

「守るべきとのたまったカウヘンヘルム(先祖)自身が、身内を殺していった。想像つくよね?吸血鬼の牙を抜くだけ抜く奴らだ。身内の血を抜くだけ抜くことも厭わない。時には親を、時には子を。作れば作るほど金が手に入る時代は、それはもう歯止めが利かなかったそうだ」

今となっては薬の取り締まりも厳しく、売ることが難しくなったが、売らずとも契約したグランシエル家には引き続き薬を渡さなければならない。

「同族殺しが終わっても、奴らは禁忌を犯す。材料たるカウヘンヘルムの血液だが、世代が交代するにつれ、薬の効果が弱まってきた。何故か。当たり前。子は母と父から産まれる。そうして、父母のどちらかは外様。カウヘンヘルムの血として機能しなくなるほど、栄えたんだ」

一族が栄えるとは、その血筋が増えることであり、その分、外から多くの人物を戸籍に入れることになる。薬によって栄華を極め、栄えたならばなおのこと。カウヘンヘルム家に嫁ぐ物は数多いた。

「ねずみ算式に増えていくカウヘンヘルム家の子が、初代の奴らとまったく同じ血(濃度)であるわけがない。それに気付いたカウヘンヘルムは、次に何をしたと思う?」

聞かずとも理解出来るだろう。
外から人を招いて出来た子が、役に立たぬというのならば。

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