形なき愛を血と称して。【狂愛エンド】
「身内間での交合。親子、兄妹ーー当初は一等親間でのことだったが、産まれてきた物はどれも短命、次に二等親間。これは長く続いたようだ。世間に公表出来ないことをカウヘンヘルムは影でやり続けてきたが、今の時代、それを良しと通す訳にもいかない。衰退していく一方の一族は、身内から見放されていき、今に至る」
かくいう金髪の男は、自身の代で終わらせると言う。何百年とある歴史をさぞ愚かだとせせら笑いながら。
「この薬はね、僕の血で出来ている」
小瓶の気体が揺らめく。
「全盛期に比べたら効果は薄いかも知れないけど、それでもーー空気に触れただけでも達せるほどの効果はあるよ。僕の血は、濃いだろうから」
愚かしい者の血が巡る体を誰も愛してはくれない。
周りも、己でさえも。
「母は、僕が幼い時ーー産まれてから一年もしない内に亡くなった」
『愛されなかったんだね、君も』
「自殺だった」
『愛されなかった』
「僕の父は三年前に亡くなった。86才の大往生だった」
『己でも忌々しい体を、どうして愛してもらえる』
「父が66歳、母が18歳の時に産まれたのが僕だ。グランシエルの吸血鬼に薬を渡し続ける“材料”を用意するため、自分の姪を孕ませ、産ませた。姪の家族は貧しかったらしくてねぇ。幾ばくかのお金で事なきを得たらしい。誰かが騒がなければ禁忌も当たり障りないことで済まされる。例え、自殺されたとしても」
『愛されなかった。愛されたかった』
「僕は、そんな人間なんだよ」
『愛され、たかった』
「君は混血だから周りから疎まれていたけど、僕は血が濃いからこそ嫌悪された。結果的に家族に愛されなかった。互いに初めて得た感情だからこそ、ここまで本気になれたのかもしれない。それこそ、自己犠牲を払ってでもーー」
小瓶の蓋が、開けられる。