ちょっぴり恋して
ж 妬くほど愛しい
俺は彼女と親密になった。

彼女も大人だ。

付き合うとはどういうものか

ちゃんとわかっていた。

テニスクラブは年中無休だが

俺の定休は月曜だった。

日曜以外は夜間クラスも入っていた。

彼女と過ごせるのは日曜の夜から月曜だった。

都合がいいことに彼女の仕事は在宅の翻訳だ。

彼女は俺にスケジュールを合わせるようになった。

ある日ペットのトカゲが昆虫を食べるさまを見た。

トカゲはその牙のない歯抜けの口をパカッと開けてムシャムシャと食べた。

何回見ても愛着がわかなかったが

彼女は可愛いと言って手の平に乗せては

その小さな黄緑色のトカゲを撫でていた。

「やれやれ、少しは慣れたが、とても触る気がしないな。」

「どうして?可愛いじゃない、無害よ。」

「わかっているが、色も不気味だし、肌触りもちょっとな。俺はやめておくよ。」

「そお?じゃ、入れるわね。」

「未由、事務の堀井さんに俺たちのこと、言ってないんだろ?」

「言ってないけど。どうして?」

「彼女に怪しまれているんだが、しらを切っているから、君も黙っていてくれないか?」

「もちろんよ。」

「ところで、君の仕事の方は区切りとか無いのか?」

「一応あるけど。でも一冊終わるともう次のものが決まっているから休みなく続くの。」

「そうか、その調子だと永遠に続きそうだな。」

「何それ?どういう意味なの?」

「西海岸にいる友人に一ヶ月研修に来ないかと誘われたんだ。君も一緒にどうかと思って。」

「クラブの方はいいの?」

「ああ、了解を取った。君は無理?」

「いつからいつまでかしら?」

私は先週区切りがついたところだった。

今週から次の洋書に取りかかる予定を組んでいた。

今まで休暇らしい休暇を取ったことがなかったので

会社へ休暇の届出を希望したらすんなり通った。

私は荷造りを始めた。

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