ちょっぴり恋して
ホテルのベッドでぐったりとした朝を迎えたこともあった。

彼はすごく激しい人だった。

でも私はそういう彼を丸ごと愛した。

私が消耗し切っても最後は必ず優しく抱きしめてこう言った。

「愛してる。君だけだ。」

私は彼が伝えたい想いをそんな風に言える人だからこそ

私も誠実な気持ちで付き合えた。

「未由、なぜ荒木のこと、俺に言わなかったんだ?」

「別に理由なんてないけど。会うまでは同姓同名だと思っていたから。」

「ふぅん、それだけ?」

「ええ、それだけ。」

「他には何もない?」

「どうしてそんなことを聞くの?」

「いや、ないなら別にいい。正直言って、少し妬ける。荒木は君の高校時代を知っているから。」

「元哉さん、妬いてくれるの?それって、すごく貴重ね。」

「まったく、俺の気も少しは考えろよな。」

二人で笑い合った。

荒木先輩が私のヴァージン相手だったなんて

口が裂けても言えない。

今のところ

先輩も何もなかったように振舞っているってこと?

元哉さんは私と先輩のことを疑っているのか?

何かあるってそう思っているのか?

嫌だ、そういうのって。

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