不順な恋の始め方
「柚希」
「え? あ、はい」
「……キス、したい。してええ?」
真っ直ぐ、私を見つめる眼鏡の奥の瞳。
私は驚いてキョロキョロとしてしまったけれど、返事の代わりに一度だけ頷いて瞼を閉じた。
すると、じれったい程にゆっくりと重なった2つの唇。
軽く触れ合った後離れると、2人で照れ笑いを浮かべ、自然に手を繋いで外へと出た。
譲の手は、大きくて、ごつごつとしていて、暖かい。
そんな手に包まれることのできる私は、幸せ過ぎていると思う。
まるで、世界の幸せの半分以上を独り占めにしているのでは? と思うくらい。
そんな少し馬鹿げた事を考えている私と譲は、ご察しのとおり、今日は1日デートです。
予定は………
「今日は、ドライブしてー…公園かどっか行ってー…ほんでから、お昼ご飯やなあ」
そう言って笑っている隣の譲が持っている大きなカバンの中には、お弁当が入っている。それも、譲お手製の。
今朝早起きして譲が作っておいてくれたのだ。
ここでも女であるはずの私は何もすることができず、何とも言えない悔しさがあるけれど。