不順な恋の始め方

「なんや焦ったわ。はぁ、ほんま良かった。泣いとらんくて」

「ごめんなさい」

「ええでええで。俺もちょっとやり過ぎた思うててん。いやぁ、あかんな。このいじり癖」


反省しますわ、と髪を右手でクシャクシャと乱しながら笑う譲

そんな譲はまるで気づいていないようなので私はもう一度指摘してみる。


「いじり癖……というか、やっぱりSなんですよ。きっと」

「え? 前にもそないな事言うとったけど……そうなん? 俺、Sなん?」

「多分…いや、絶対そうだと思います。」

「いや、でもな? 俺そんなん言われたことないねん、これほんまに」


断固として、自分がSであることを認めようとしない譲。

無自覚のSとは……なんて恐ろしいのでしょう。いい加減に認めて欲しい。


「他の人は言わないかもしれないですけど、少なくとも私はそう思ってます。」

「あはは、そうかあ……うん。分かった、考えとくわ」


譲の言葉に私は『何をやねん!』と鋭く漫才のようにツッコミたかったけれど、本人は至って真剣らしいのでやめておいた。

それに、また録音したいなどと言われても困るので。

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