ジキルとハイドな彼
ここでお待ちください、と言い残すと葛城は店の奥に姿を消した。

私は一人店頭に取り残される。

木造建ての薄暗い店内は古い建物特有の埃っぽいにおいがしてなんだか落ちつかない。

キョロキョロと辺りを見回すと様々な骨董品が所狭しと並んでいる。

腰の高さまである大きな中国風の白磁の壺、所々色の剥げ落ちた黄金の屏風、その傍には鮭を咥えた木彫りのクマと大黒様の置物が飾ってある。

反対側の棚にはセルロイドの人形とレトロなブリキのオモチャが並んでいて、上を見上げれば天上から西洋風のランプシェードが多数ぶら下がっている。

なんだかカオスだわ…。

横の棚にはイタチのような謎の生物の剥製が置かれていたので、裏返して値段を見てみる。

に…23万円…?!

美しい店員に思わず着いてきてしまった事を薄々後悔し始める。

変な壺とか売りつけられたらどうしよう。

「お待たせしました」

突然声をかけられたので驚いた拍子にイタチもどきを取り落としそうになったが、なんとか空中でキャッチする。

中腰の無様な姿のままぎこちなく振り向くと、葛城はトレイにアンティーク調のティーセットを載せてにっこりと微笑んでいる。

「そちらお気に召しましたか?」

「へ?ああ…可愛らしいイタチですね」

見ると、牙を剥き出し、思いっきり威嚇している表情だ。

「イタチではありません、テンです。同じイタチ科ではありますが」

はあ、と間の抜けた返事をする。
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