嘘つきなポーカー 2
「どうしてこんなところに1人で住んでいるのか、小野寺薫は一体何者なの…「黙れ。」
由佳の言葉は、薫の声によって遮られた。
由佳が薫の方を見ると、薫はまるで氷のような冷たい瞳で由佳のことを睨みつけていた。
さっきまで由佳に見せていた優しい眼差しがまるで嘘のように薫の瞳は冷たく、由佳は言葉を失った。
「お前には関係ない。ズカズカと踏み込むな。」
「……。」
「そんなことを聞くためにここに来たんなら、帰れ。」
「……。」
「俺は何も話すつもりはない。帰れ。」
「……。」
「帰れ!」
「……っごめんなさい!」
由佳は震える声でそう叫んで、荷物を持って薫のマンションから飛び出した。
薫のマンションから逃げるように走りながら、由佳はやってしまったと思った。
とんでもない地雷を踏んでしまったらしい。
確かに薫が踏み込んで欲しくない領域に足を踏み込んだとは思ったが、あれほどまでに薫が怒るとは由佳は想像していなかった。
薫のあの冷たい瞳は、由佳も何度か見たことがある。
奈津子が由佳を集団リンチしようとした時、恭平が由佳を誘拐した時――…そう、薫が敵に対して向ける冷酷な眼差しだ。
「嫌われた……よね。」
そう呟いた由佳の目から、涙が1粒零れた。