嘘つきなポーカー 2
和也と奈津子と華代の3人は寒さもお構いなしな様子だが、寒がりの由佳にとっては真冬の海に入るなど考えられなかった。
「…っくしゅん。」
「…ったく。」
寒さにぶるぶる震える由佳を見て、薫は呆れたようにそう言うと、自分が羽織っていたダッフルコートを由佳の肩にかけた。
「いいよ…。小野寺薫が風邪引いちゃう。」
「いいから黙って着とけよ。」
薫はそう言って砂浜に座り込んだ。
自分だけ隣で突っ立っているわけにもいかなかったので、由佳は薫の隣に遠慮がちに腰かけた。
しばらく無言で、由佳と薫は海に入ってはしゃぐ3人の姿を眺めていた。
すると奈津子が和也の肩を小突き、その拍子に和也が海の中に尻餅をついた。
それと同時に、和也が寒さのあまりとんでもない奇声をあげる。
「はははっ」
由佳は、そんな和也の姿がおかしくて思わず笑った。
すると、薫がじっと自分のほうを見つめているのに気付いた。