王様とうさぎさん
 


「というわけで、私はもう少し仕事を続けたいんですよ」

 及川より遅れて現れた允の両親は、実に感じが良かった。

 允によく似た実直そうな父親と、笑顔で頷いては話を聞いてくれる母親。

 やはり、敵は及川か、と思った。

 いや、別に向こうも喧嘩を売ってきているわけではないのだが。

 向こうが必死なだけに、偽の花嫁候補にとっては、敵以外の何者でもない。

 だが、檀家の総代としては、かなりいい人の部類かもしれない。

 寺の存続に必死だ。

 住職よりも……。

「まだしばらくはこっちに住まなくていいと言ってるだろう。

 マンションで允と好きに暮らせ」

「いや、そんな申し訳ない」
と言うと、如何にもいい嫁のようだが、単に結婚したくないだけだ。

 だが、そんな裏を知らない爺様たちは、しきりに感心してくれる。
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