王様とうさぎさん
「だって、それは……ええっとっ。
 もう、いいっ」
と莉王は起き上がり、慌てて追いかけて行った。

「待って、允さんっ。
 それ、私が運ぶからっ」

 後ろで、忍たちがゲラゲラ笑っている。

 呑気な奴らだ。

 そう思うと同時に、清香の姿が頭に浮かんだ。

 允が、忍が、真人が彼女の側にも居たのだろうに、何故、彼女は死を選んでしまったのだろう。

 允と一緒に奥の部屋に布団を片付けながら、莉王は開いたままの襖から、境内の楠を見る。

「あそこから動けないの、清香さん。

 どうしてだろう。

 それに、清香さんがあそから動けないままだと、きっとずっと、貴方も清香さんのことにこだわっているのよね」

 清香がすっきり上がったと言えば、允は楽になれるのかもしれないが、清香のためにそれはしたくないし、なにも見えていなくとも、允は騙されない気がしていた。

 允は押し入れの戸に手をかけたまま言った。

「こだわると言うか。
 もう今更どうにもならないことだけど。

 どうしてあんなことになったのか。
 自分は、あのとき、本当はどうすればよかったのか、知りたいと思う。

 そうでなければ、此処を継ぐことはできないと思うから」
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