王様とうさぎさん


 不思議なことに、今日は職場のあちこちで、清香の気配を感じた。

 いや、姿は見えないのだが、どうも居るような気がする、と思っていた。

 物珍しそうに辺りを眺めているような。

 真人の部署に書類を持って行ったら、真人が仕事をしているのを座っている彼の頭の上から清香が覗いていて、不思議そうにしていた。

 彼女が死んだときには、子どもだった真人が自分の年を追い越して、サラリーマンをやっているのが、不思議なようだった。

 ちょっと微笑ましくて笑ってしまう。

 忍の店に連れていってやろうかな、とちょっと思った。

 清香はどんな顔をするだろうか。

 だが、允に提案したら、またにしろと言われてしまった。

「明日にでもしよう。
 今日はもう、家で食べると行ったから、寄り道せずに早く帰った方がいい」

 そう言う允に、笑うと、なんだ? と見る。

「いや、お母さん想いのいい子だなあと思って」

「子!?」
と允は何かの聞き違いかと言ってくるが。

「だって、お母さんからしたら、ずっと子どもじゃない。

 うちの親だって、おばあちゃんの知り合いからは、未だに娘さんって言われるわよ。

 それで喜んでるけど?」
と言ってみたが、ちょっと厭そうな顔をしていた。
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