王様とうさぎさん
 

 帰りは、予告通り、允のマンションに寄った。

「車で待ってようか」
と言うと、いいから、上がれ、と言う。

 なんなんだ、と思いながら、部屋に行くと、玄関を入ったところで、いきなり允が抱き寄せてきた。

「なっ、なんなんですかっ」

「この状況で、なんなんですかというのはどうかと思うが」

「やっぱり、お母さんの言った通り、要警戒ですねっ」

 距離を取りたい意識の現れか、職場でもないのに、つい、敬語に戻っていた。

「俺と結婚すると決めたんじゃないのか」

「い、いや、まあ、それは……」

 かなりそちらに傾いているのは確かだ。

 允のことも好きなんじゃないかなーとは思う。

 だけど——。

 考える間もなく、允が口づけてきた。

 今までの比ではなく、強く抱き締めてくる。
 
 もがいて逃げると、後ろの白い壁に押し付けられた。

 思わず、下駄箱の上にあった細長い重そうな時計を両手で掴む。

「允さん、殺しますよ」

「じゃあ、殺せ」
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