王様とうさぎさん


「寝てていいぞ」
と通勤の車の中で允が言ってくれた。

「允さんこそ、たまには寝ててもいいですよ」
と莉王は答える。

「誰が運転するんだ」

「私に決まってるじゃないですか」

「運転できるのか!?」

 ……できますよう。

 車がないだけで。

「莉王」
と允は微笑んで呼びかけてくる。

「結婚前になにかあったら、問題だろ」
と。

 一度も運転してみせたこともないのに、この信用のなさはなんだ、と思っていた。

「そういえば、指輪はどうした」
と言うので、ケースごと鞄から取り出して見せると、

「なんでつけないんだ」
と言ってくる。
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