王様とうさぎさん
「でも、学生だったし」

「あの、それ、先生は自分がフラれたと思ったんじゃないですかね?

 それで、見合いを」

「えっ、そう?

 ともかく、そのあと、あの人は別の人との結婚を決めて。

 私は妊娠して、子ども堕ろしたけど、殺されて」

「あのー、それ、堕ろせって言われたんですか?」

「そんな他の人と結婚しようとしてる人に相談なんかしないわよ」

「それ、堕ろしたから、殺されたのでは?

 本当に自分に気がないんだと思って」

「……そうなのかしらね。

 なんかあんたのフィルター通すと、急に愛に溢れた世界になったわね」

 いや、私には、ヤバイストーカーの匂いしかしませんが、と思っていた。

 だいたい、妊娠して、子どもを堕ろしてって話が入る位置がおかしいし。

 結婚を決めて、の前ならともかく。

 だが、清香は、小首を傾げて言う。

「道を選び間違ったのは、あの人じゃなくて、私だったのかしら」
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